第三十章~始まりの場所~

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                「寒っ!」 時期的に春過ぎだと言うのに、彼女の頬を掠めた(かすめた)風は、冷たさを含んでいた。 時間も、あれから三十分程は経過している。 (そろそろ出ても、大丈夫だよね) 奈央子は冷たい風がそよぐ中を、家路へと急いだ。 ――カサッ 何かが頬にあたった。 真っ暗だったが、その感触で何があたったかはわかる。 (葉っぱ?) 下へと向けていた顔を見上げると――そこは満開の花が咲いていた、桜の木の真下だった。 現在は花も散り、綺麗だった花びらは…緑の葉っぱへと、姿を変えている。
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