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「寒っ!」
時期的に春過ぎだと言うのに、彼女の頬を掠めた(かすめた)風は、冷たさを含んでいた。
時間も、あれから三十分程は経過している。
(そろそろ出ても、大丈夫だよね)
奈央子は冷たい風がそよぐ中を、家路へと急いだ。
――カサッ
何かが頬にあたった。
真っ暗だったが、その感触で何があたったかはわかる。
(葉っぱ?)
下へと向けていた顔を見上げると――そこは満開の花が咲いていた、桜の木の真下だった。
現在は花も散り、綺麗だった花びらは…緑の葉っぱへと、姿を変えている。
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