第三十章~始まりの場所~

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幾度となく見てきた、桜の木だが――今日は、いつにも増して…何処か寂しく映った。 「…ぃつの間にか、散っちゃってたんだ」 その木は、静かに立ち尽くしている。 「もぅ…春も終わったもんね」 切なさが、彼女を包む。 (…この会社に入ってから、何年だろ。仕事もやれるだけやってきた、貢献はしてきたつもり――でも、“仕事”だけの人間になっちゃってたんだね…いつの間にか、きっと……。 《恋がしたい》 《誰か、ここから出して!》 ――ぃつも、そう思ってた。 色んな人を好きになって、付き合ってきたけど…最後はいつも、一人だった。……女らしくしようと努力してきたけど、いつも上手くいかなくて――その度に泣いて…もっと努力しようと頑張って、我無者羅(がむしゃら)になって…‥‥。 でも――変な意地張って、自分の事より相手の事、真っ先に考えて…カッコつけちゃって……。 …どうしてかな? 何で、こんな人間に生まれてきたんだろ――?もっと適当に生きてれば、楽しいんだろうね……。 ――…加藤の言う通りだ、きっと私は……死ぬまで治んなぃ、この性格は…きっと――っ)
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