第三十四章~天の邪鬼~

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                ――あれから、何日かが過ぎた。 …だが、彼女は未だに答えが出せないでいる。 “明彦の事が、嫌い?” いや――違う、むしろ逆。 只、恥ずかしいだけなのだ。その証拠に、彼と目が合っただけで…奈央子は顔を真っ赤にして走り出してしまうのだ。 あの日はそんな事なかったのに……いざ振り返ってみると、どうしようもなく恥ずかしい――。 彼女の《女の部分》が、そうさせていた。 反対に――当の明彦本人は、至って平然としている。 むしろ、奈央子のそんな姿が嬉しいようである。 顔を合わせる度、真っ赤に頬を染め上げ…足早に走り去る彼女――そんな姿を見せられて【可愛い】と、思わない男はいない。 “返事はいつまでも待ちます”的な彼の言葉は、嘘ではなかったようだ。 まぁ…そんな彼の余裕の態度が、彼女を逆に焦らせている原因になっているという事実を……明彦は知るよしもなかったのだが――…。
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