第三十四章~天の邪鬼~

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「先輩」 「ぇ?」 「黒沢と、何かあったんですか?」 「べ、別に」 「ふ~ん」 「何?」 「…別に」 「…………」 博美に至っては、全てを知り尽くしているようだが…敢えて突っ込むのはやめておこう。 「…そろそろ、ちゃんと言わなきゃ駄目だよね」 奈央子は給湯室で一人、コーヒーを口に含んだ。 明彦から告白されて――早数日。 待っていると言ってくれたとはいえ…いい加減にきちんとした返事を返さなくては。 しかし、何処で言えば良いのか? 会社には、他の社員達も大勢いる――では、明彦にマンションに来てもらうか?……いや、それもいかにもという感じがする。             …では、帰り際に呼び止めて――あの桜の木の下で待ち合わせをしようか?? 幾つもの選択肢が、彼女の脳裏を横切った。
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