第三十六章~嘘付き~

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――言いたくない。 こんな事、言いたくないのに…止まらない。 「っあ、黒沢さん」 ――ドクンッ その声に、奈央子は咄嗟に我に返った。 「…………」 “聞かれた?” 「今…の、聞こえてました?」 真名美の質問に、明彦は笑みで答えた。 「何の事ですか?」 「良かったぁ、聞こえてなかったんですねっ」 “本当に?” 「じゃ、先輩!さっきの相談、考えといて下さいねっ」 「ぅ、ん…」 「お先に、失礼しま~すっ」 明彦の横を、彼女は嬉しそうに――満面の笑顔を浮かべ、走り抜ける。
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