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…残ったのは――
冷たい視線を、一心に向ける彼と…
それを受け止める、彼女…
「……奈央子さん」
――ビクッ
「はっ、ぃ」
明彦の声に、奈央子の体は敏感に揺れた。
《聞かれた!》
彼女の思考は、渦巻いた。
絶対に、聞かれたくなかった相手――だが、“聞かれてしまった”という……事実。
全部、嘘――さっき聞いてしまった事は、全て…嘘。
言いたい事は決まっているのに、彼女は上手く口に出せない。
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