第四章~あい違い~

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「はいっ」 「…すみません」 「どう致しましてっ!じゃ、先に行くね」 「ぁ、はぃ」 「じゃねっ」 奈央子は給湯室を後にした。 その表情からは既に曇りの色はなく――清々しい(すがすがしい)。 そんな彼女の後ろ姿を見送りながら、明彦はボソッと呟いた。 「……心配して見にきた、なんて――言えっかょ…」 悩みなんて掻き消したはずの、奈央子。 しかしこの先――そんな彼女に新たな出来事が待ち受けていようとは……一体誰が想像出来ただろうか? その原因を作った人物は、さっきからコーヒーを熱そうに飲んでいる――そこの“彼”である。 彼自身も、まさかそんな事態が起こるとは…露(つゆ)にも感じていないのだが…‥‥。 そんな二人の一大事を、何も知らないかのように――東済商事に降り注ぐ太陽は、一層暑さを増していくばかりであった…。
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