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明彦が無自覚に喋った一言が、自分の中を満たしている。
(――どうして?)
「な~んか、秘密ごとですか?」
「っえ?」
驚いて振り返ると、博美が微笑みながらこちらを見ている。
「ぅうんっ、そんなんじゃないってば!」
「ふ~ん」
「…何?」
「“恋人同士”…みたいですね?」
「っっっな!?」
「冗談ですよ」
「…………」
博美の悪戯に呆れながらも、奈央子は用心した。
彼女は、少なからず知っているのだ。
明彦と一緒に暮らしている事は知らないにしろ――彼が、自分にアプローチしていた事を…‥‥。
奈央子は偶然にも見られてしまった、明彦とのメールのやり取りを思い出した。
(意外なとこで感が鋭いから…注意しなくちゃ)
奈央子は気付かれぬよう、その視線を博美へと向けた。
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