第六章~待ちわび~

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「……何度も、電話したんですょ?」 「…黒沢、君」 急に優しく、穏やかな口調へと変わる。 それは、彼が心の底から彼女を心配し…案じてくれていた事を、示していた。 「とにかく…これで頭、拭いて下さぃ。風邪――引いちゃいますょ」 明彦は準備していたバスタオルを、奈央子の頭に覆い被せた。 「お風呂も沸かしてありますから、先に入ってきて下さいね」 「……ごめん」 「?」 「……ごめん、なさ…ぃ。最初は、電話しようと思ったんだけど――これくらいで頼りにしちゃ、絶対に迷惑になると思って…。 本当に…ごめん……。 逆に、迷惑…掛けて――」 奈央子は、精一杯の気持ちを表した。 彼が怒るのも、無理はない――。謝れば、明彦は許してくれるだろうか?
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