第八章~予兆~

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歯ブラシに歯磨き粉を付けると、それを口に押し込んだ。口の中に、ミント味が広がる。 それと同時に――ハッキリとしてくる意識。 (昨日の雨が嘘みてぇ…凄ぇ晴れてるしっ) 明彦は、窓からの陽射しに目を細めた。 昨晩とは全く違う天候に、心も晴れ晴れとしてくる。 確かに――その日は、違っていた。 きっと今日一日、太陽が影るなんて事はないだろう。 (喜びそっ) 奈央子の事を思い出し、明彦はまだ起きてこない彼女に声を投げた。 「奈央子さんっ、そろそろ起きないと遅刻っすよ?」 ――――…………‥‥ だが、彼女の声は聞こえてこない。 「お~いっ!」 今度は、少し大きめの声で呼んでみる。 ――が、先程と同じく…起きた気配すら、感じられなかった。
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