第九章~病弱彼女~

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その顔中は真っ赤に染まり、額からは脂汗が滲み出ている。 「奈央子さんっ、奈央子さんっ!!」 「…く……ろさゎ…く、ん」 奈央子はそのか細い声を、何とか搾り出すのが精一杯だった。 額に手をあてると、彼女の苦しさが一発でわかる。 「凄い熱じゃないっすか!?」 「…ご、めん」 「謝らなくて良いからっ」 「…………」 状況を察し、明彦は大急ぎで台所へ走った。 ボールに水を入れ、タオルを浸し――冷たくなったそれを、彼女の額に置く。 (気持ち…良ぃ) 瞳を開くと、心配そうに…不安そうに自分を見つめる、彼がいた。
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