第十章~奮闘~

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その後明彦は、彼女の為に出来る限りをやった。 氷枕の代用に、《熱冷まシート》を大量に用意したり―― 途中、食欲がわくかもしれないと《お粥》を作ったり―― わざわざ水を飲みに行かなくても良いように、枕元に《水さし》を準備したり―― その徹底振りには、思わず奈央子も声を掛けた程だった。 「黒沢君、もう良いよ…十分だから――それに、急がなきゃ会社に遅れちゃうよ?」 「大丈夫っすよ!もう終わるし」                 あらかたやり終えると、明彦は奈央子の傍に近付いた。 「それじゃ、そろそろ行きます」 「ぅん」 「…………っ」 一瞬、彼の表情が変わる。 「ぁの…俺、やっぱり――っ」 「駄目っ!」 「ぇ?」 「黒沢君まで休んじゃ、駄目」 「…………」 「さっきも言ったでしょ?」 「……はぃ」
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