第一章~自問自答~

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明彦は冗談めいた笑顔を向け、奈央子を横切った。 会社に出社する為の、準備を始めるつもりなのだろう――。 奈央子はその皮肉めいた言い方に、ほんの少しの苛立ちを覚えながら…自分の姿を鏡へと向けた。 (今日も……メチャクチャ髪、ハネてるし…) 自身の髪の毛に触れ、その無造作ヘアーに溜め息を漏らす。 (こんなに髪の毛グチャグチャで、朝の目覚めも最悪なんて――《女》と思われてないよねぇ…) そこまで考えて、躊躇する。 (――ん?何でそんな事、思うわけ?? 黒沢君に女と思われようと、思われまいと、私には関係ないでしょっ!) 「さぁっ!今日も仕事、仕事!」 その大袈裟な程の声は、明彦まで聞こえたのか――彼女の目に、笑いを堪えている彼の姿が、鏡越しで確認出来た。
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