第十一章~疑い~

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「どうした、黒沢?」 「アネゴは――」 「何か、知ってるのか?」 「は、ぃ」 (どうしよぅ……何て言えば良いんだ?) 「何だ?」 (とにかく、言わなきゃっ) 「あのっ!アネゴは急な用が出来たみたいです」 「それはわかっている、だからまだ来てないんだろ」 (ぁ~……う゛~…) 「だ、からっ!アネゴは、その急な用事で…休み、ます」 「急な用事?」 「は、はぃ」 「どんな用事か知らんのか?」 「ゎ、かんない…です」 「ん~…」 (…………駄目?) 「仕方ないかっ」 「ぇ?」 「野田君には、日頃頑張ってもらってるし――昨日、頼んでおいた書類も完成してるみたいだしな!野田君には、ゆっくり休んでもらおうかっ!」 坂口部長の気風(きっぷう)の良さに、明彦は胸を撫で下ろした。
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