第一章~自問自答~

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    ●心の声● 『何ょ、急に褒め言葉なんて…ビックリするじゃなぃ…』 『何だ?急にうつ向いて――でも、何か…可愛ぃかも……』 『駄目駄目!!最近、黒沢君にペース崩されまくりだわ!しっかりしなきゃっ』 『…こういうとこが、年上っぽくないんだょな――』 『私は十歳も年上なんだから、しっかりしっかり!』 『何気ない仕草が、女らしいっていうか…ほっとけないっていうか――』 『今日もビシッと言ってやんなきゃ!うんっ』 『――ん?何でんな事…思うわけ??』 『ビシッとビシッと!』 「気のせい、気のせい」 「ぇ?」 明彦と奈央子の視線が重なる。 「…な、にょ?」 「……別に」 「…………」 「…………」 その後――彼女の威勢の良い声が、明彦に投げられる事は一度もなかった。
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