第十五章~鈍感なアイツ~

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何も気付いていない明彦は、東済商事のドアを潜る(くぐる)と――大急ぎでマンションへと走った。 学生時代の、ラグビー部部長としてのその足を、彼は大いに奮った(ふるった)。 もちろん――風邪に効く食材を、調達するのも…忘れずに。 「奈央子さんっ!」 その声は、ベッドで休んでいた彼女の耳にも良く届いた。 「黒沢君」 「電話、鳴らなかったけど――大丈夫でしたか?」 「ぅん、大丈夫…黒沢君が、色々してくれたから」 「そっか、良かったっ」 明彦の安堵している表情が、心の底から自分を心配してくれていた事がわかる。 「ありがとう…黒沢君」 「どしたんっすか?急に??」 「ぅうん…何でもなぃ」 「?」
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