第十五章~鈍感なアイツ~

5/5
前へ
/264ページ
次へ
゛黒沢 明彦゛という人間は、彼女の中で…確実に、大きくなっていた。 本人も――知らない内に、意識だけは…していた。 踏み出そうと思えば、いつでも踏み出せるのに……胸の内側で 『それはやめろっ』 ――と、もう一人の自分が反発する。 明彦と奈央子は、十歳も年が違う……。“年なんか関係ない”という言葉を本などでは良く目にするが――現実は、そうはいかない。 奈央子は“結婚に焦っている側”――。 明彦は“結婚はまだ考えられない側”――。 全然…違う…‥‥。 (どれだけ意識しても――結婚だけは、考えられなぃ…考えちゃいけなぃ…‥‥。 ゃっぱり、【十歳の年の差】は……大きいょ――) 奈央子は台所で響く、軽快な包丁の音に、静かに耳を澄ました。
/264ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2272人が本棚に入れています
本棚に追加