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年上で、しっかりしているかと思えば――たまに、ドジを踏んだりする。
知的ぶっているかと思えば――大きな口を開けて、笑ったりする。
泣き顔なんて、意地でも見せないかと思えば――些細な事で傷付きやすくて、涙なんか見せたりする。
明彦は…そんな彼女に、好感を持っていた。
先輩に対する感情とは違う――何か、特別な感情を…抱いていた。
“愛している”
本当に、そんな感情なのかどうか…わからない。
だが――その想いとは裏腹に、彼は……彼女の唇に、触れていた。
…ごく普通に――
…ごく自然に――
まるで……《おとぎ話》に出てくるような甘いキスを、明彦は奈央子から奪った。
「……何か、胸ん中…熱ぃ」
胸に沸き立つ、その意味がわかるまで――もう少し。
二人にとって、人生の転機を迎える日にちは…刻一刻と、秒数を進めていた。
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