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「で?」
「え?」
「その鬼神さんとやらが強いのは解ったよ。グレイスが認めるなんて滅多にないしね。でも、それがどうしたの? 僕には関係ない」
矢張り、と言うか。
サファイアはこの先の話がなんとなく解っているようだった。
だから言う。
僕を巻き込むな、と。
こちらも断られる事は解っていた。けれど引き下がれない。どうしてもこの友人でなければならないのだ。
グレイスは姿勢を正す。
「実は先日、“鬼神”ギル・ストラが攫われた」
「へぇ」
笑っているが、既に断る気満々なのが嫌という程解る。フードの宝石商の微笑みはこう言っていた。
早く帰せ。
簡単に帰すものか。
まだ詳細も語っていないのに。
グレイスは辛抱強く話す。
「攫ったのは小さな村。かねてより軍に反発して度々暴動を起こす小煩い蝿(はえ)の群だ。そこの長から脅迫状が届いてな」
かの有名な鬼神を捕らえた。今直ぐ戦争を止めろ。愚かな国王と直々に話をさせろ。一週間待ってやる。過ぎれば、戦力百人分と謳われる鬼神の命は無いと思え!
「つまり、僕にその攫われた間抜けな鬼神さんを助けて欲しいとそう仰るんだね。グレイス・アスティ少佐は」
ああ、もう大佐だったっけとサファイアは小馬鹿にしたように付け足した。
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