Ⅰ 金髪碧眼の軍人

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  「いや俺はまだ中佐だ、……って、そんな事はどうでもいい。サファイア。どうか友の頼みを引き受けてくれないか?」   「嫌だね」   即答。 迷う様子すら見せなかった。 解ってはいたが、こうもはっきり拒絶されるとは。 グレイスは迷った挙句、早いとは思ったが切り札を出す事にした。   「お父上がどうなっても構わないのか?」   グレイスの言葉に、宝石商の紅茶を啜る手が止まった。 そしてティーカップを置き、紅い唇だけでにやりと笑う。   「卑怯とは言わないよ。父の命を握るなんてねぇ。人情に訴える、実に幼稚な手段だ」     どうせ君も家族の命を握られているんだろうと友人は続けた。 グレイスは唇を噛む。 そんなグレイスに構わずサファイアはなおも言葉を続ける。   「そして家柄と地位もね。君のご両親やご兄弟の事を考えると、こうして僕に必死に頼む理由も解るよ。お互い様って訳だね」   でも、と宝石商はティーカップを手に取りながら言う。     「全て僕にはどうでもいい事だよ。グレイスには気の毒だけどねぇ、僕は父が殺されたって構やしない」     友人が紅茶を啜ると、深く被ったフードから黒髪がさらさらと零れ落ちる。   まぁ……。予想通りと言えば予想通りの反応だ。 心底からの言葉ではないだろうが、どうあっても拒絶するつもりらしい。   しかし。   引き下がれない。 鬼神を救うのはサファイア・P・スィアーノでなければならない。意地でも引き受けさせてやる。   グレイスは深呼吸をひとつしてから口を開こうと、した。  
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