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――仮面。
それは仮面だった。
鮮やかで深い青。
散りばめられたダイヤモンド。
ソレは彼の顔を半分以上隠し、白い右頬と紅い唇、穏やかな灰色の目だけを晒していた。
グレイスは思わず目を逸らす。
「隠せ。そんな目立つ仮面」
不気味だから見たくないとは言えない。
実際サファイアの仮面は派手でかなり目立ち、顔を隠すという仮面の本来の意味をぶち壊していた。
サファイアは、目を逸らすグレイスを見て、解ったよと笑いながらフードを被り直した。
「目立つようにしてるんだから、別にいいじゃないか」
「お前……。その格好だけでも目立つのに。偽名もないし。見付けてくれと言ってるようなものだぞ」
グレイスの言葉に、サファイアはくすくすと笑った。
「僕は隠れるつもりなんて端からないしね」
そう言って紅茶を啜る友人を、グレイスは呆れながらも心配そうに見やる。
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