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「サファイア。自分の懸賞金幾らか知っているだろう? この酒場、いや、国中何処にいたって安全じゃない。少しは命を大切にしろ」
「どうして? 僕を殺したいなら殺せばいいさ」
グレイスはどこか投げ遣りで、諦観すら滲ませている友人の発言に思わず声を荒げる。
「お前はどうしていつもそう……!」
「ところで話ってなんだい?」
サファイアは紅茶を美味しそうに啜りながら、強引に話を変えた。
都合が悪くなるといつもこうだとグレイスは心中で悪態を吐く。しかし、話があると、この宝石商の友人に言ったのは自分。
グレイスはため息を吐いてから、話を切り出した。
「“鬼神”を知っているか?」
「さぁ。知らないなぁ」
「噂くらい聞いた事あるだろう。鬼神――ギル・ストラ伍長。約一年前に起きた我がローグランド国内に、敵対するカルグランド国の小さな軍隊が侵入してきた、あの」
あの小さな戦だと言いながら、グレイスはその碧い目で友人の反応を窺う。
友人はこの手の軍事的な話は嫌いだ。だが、今は特に嫌がっている様子は見受けられない。話をちゃんと聞いているのかすら解らない。右から左へ聞き流していないか少々心配にもなるが、とにかく最後まで話してみようと、グレイスはティーカップを弄びながら再び口を開く。
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