Ⅰ 金髪碧眼の軍人

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  「サファイア。自分の懸賞金幾らか知っているだろう? この酒場、いや、国中何処にいたって安全じゃない。少しは命を大切にしろ」   「どうして? 僕を殺したいなら殺せばいいさ」   グレイスはどこか投げ遣りで、諦観すら滲ませている友人の発言に思わず声を荒げる。   「お前はどうしていつもそう……!」     「ところで話ってなんだい?」     サファイアは紅茶を美味しそうに啜りながら、強引に話を変えた。 都合が悪くなるといつもこうだとグレイスは心中で悪態を吐く。しかし、話があると、この宝石商の友人に言ったのは自分。   グレイスはため息を吐いてから、話を切り出した。     「“鬼神”を知っているか?」     「さぁ。知らないなぁ」   「噂くらい聞いた事あるだろう。鬼神――ギル・ストラ伍長。約一年前に起きた我がローグランド国内に、敵対するカルグランド国の小さな軍隊が侵入してきた、あの」   あの小さな戦だと言いながら、グレイスはその碧い目で友人の反応を窺う。   友人はこの手の軍事的な話は嫌いだ。だが、今は特に嫌がっている様子は見受けられない。話をちゃんと聞いているのかすら解らない。右から左へ聞き流していないか少々心配にもなるが、とにかく最後まで話してみようと、グレイスはティーカップを弄びながら再び口を開く。  
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