最終章・その命の真実

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一際大きなひびが入ると、卵の殻が真っ二つに割れた。 手の平サイズの小さな蛇が、テーブルの上にちょこんと鎮座していた。 「一般に使い魔と呼ばれるモノだな。契約者や創造者に従って行動する」 「すご~い!これってパパのクラウと同じなの?」 ジェレミィの頭の上で欠伸をする龍を指差してシャールが聞いた。 「………クラウは違う」 自分を変えてしまった龍、自分の半身である龍に手を差し延べれば、龍はクレスの手に留まった。 「クラウは使い魔とは違う。少し特別なんだ。まあ殆ど同じと考えればいい」 「ふ~ん」 さして興味もなさそうにシャールは蛇をつっついた。 ………かぷっ 「……パパ、噛まれた」 シャールが目を潤ませてクレスを見た。 「……だから気をつけろと言ったんだ」 シャールの伸ばした指先を見れば、確かに小さな噛み痕が在った。 「暫く疼くが我慢しろ」 小さな手を自分の手で包み込むと、淡い光が現れて消えた。 「パパ、治った!」 「………お前ももう少し加減してやれ」 蛇の頭をクリクリ撫でると、蛇は気持ち良さそうに身をよじった。 「パパってどーぶつさんと仲いーよね~」 「パパ、これって僕にも出来る?」 「………やってみたかったら勉強するしかないな。後は素質と鍛練だな」 「練習一杯すれば俺にも出来んの!?」 「サボらなければな」 「じゃあパパは沢山練習したんだ!」 「………とはまた違うんだがな」 あの時は生き残る為だった。 生きる為であれば何でもした。 人殺しでも、何でも。 それが本当に死にたくなかったからなのか命令だったからなのかは自分でも知らないが。 言葉を濁したクレスに子供達は不思議そうな表情だったが、直ぐにせがみだした。 「パパ、僕にも教えて」 「ズルい、僕も~」 「アタシも~」 「僕も僕も~」 クレスはため息一つ吐いて子供達一人一人の頭を撫でた。 「……暇な時にな」 「約束だよ!」 「あぁ、分かった」 そう言って蛇を右手の上に乗せると、空いた左の手の平に小さな魔法石を生み出した。 「先ずはこれが出来ないと使い魔を創り出すのは難しい。これはコイツに食べさせるからかなり小さいが、使い魔を創るにはもっと大きなモノでなければならない」 そう言うと、闇色の魔法石を蛇の目の前に置いた。 蛇はそれをぺろりと一口で食べてしまった。
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