最終章・その命の真実

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‡‡‡‡‡‡ ふわふわと、宙に浮いてるみたいだとジェレミィは思った。 初めて魔法が使えた時もこんな感覚がしたけれど。 「……パパ…………?」 隣で寝ていたクレスがいない。 寝ぼけ眼で部屋を見渡せば、子供達がそれぞれのベットで寝てるだけ。 今日は我が儘を言って、クレスのベットで一緒に寝ていた。 一緒に寝ていた筈なのに、何で何処にもいないのか。 不安になったジェレミィは、シャールを揺さぶり起こした。 「何……お兄ちゃん」 「…パパがいないよぉ」 「パパ……ラブホ……」 「………」 ジェレミィは完全に寝ぼけているシャールを無視する事にした。 「バルムンクは…?」 初めて自分で創った使い魔は、ベットの中で自分が足蹴にしていたらしい。 キュイっとジェレミィに抗議の声を出すと、ジェレミィはごめんと言いつつ嘴を掻いてやった。 鷲の頭と前足と翼、ライオンの下半身―――俗に言うグリフォンの使い魔。 名前はクレスに付けてもらった。 何でも、伝説の大剣の名前らしいけど、ジェレミィは生憎伝説には一片の興味のカケラすら無かった。 「バルムンク、パパがいなくなっちゃった………」 バルムンクの真っ白な毛並みを梳きながらジェレミィは愚痴った。 キュイっと一声鳴くと、バルムンクはテラスの方へ羽ばたいて、カリカリと猛禽の爪で入口を引っ掻き始めた。 「こら、駄目だよバルムンク。またママに怒られちゃう」 ひょいとバルムンクを抱き上げると、テラスに誰かがいる事に気付いた。 漆黒の長い髪に闇を映した様な服の青年がテラスの手摺りの上に立っている。 「パパ………?」 ガラガラと無遠慮にテラスへの扉を開けると、そこにはクレスがいた。 「………」 クレスはそれまで立っていた手摺りの上からテラスへと降り立った。 「パパ、あんな所に立ってたら危ないよ」 「…………………」 「クラウは?」 「………」 髪留めを付けずに伸ばしっぱなしの髪の間からクラウが顔を覗かせた。 しかしそれ以上クレスが反応する事は無かった。 「ねぇパパ、何で此処にいたの?」 「…………」 無言のクレスにジェレミィは詰め寄った。 「パパ!」 「……………っ!?」 いきなり手を掴まれた事に驚きのあまり、クレスはジェレミィを突き飛ばした。
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