最終章・その命の真実

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‡‡‡‡‡‡ クレスは語った。 死神に育てられた事、人殺しとして生きていた事、全てを憎悪していた事。 誰にも言った事の無い事、ゼフィにも心と記憶を介してしか見せなかったモノを、ジェレミィに洗いざらい吐露した。 「だから、力を持つなら俺の様になるな。バルムンクを創ったお前なら解るだろう」 トールと名付けた蛇とクラウを交互に撫でながらクレスは言った。 「………俺は自分の過ちで使い魔を失った。トールによく似た使い魔で、飛という名だった。飛は俺を助ける為に死んだ」 自分に言い聞かせる様に言うクレスに、ジェレミィは何も言えなかった。 クレスは見抜いていた。 ジェレミィには素質が在る。 バルムンクが生まれた時、いや、それ以前から気付いていた。 他人に必死になって認めてもらおうとする自分と、自分に認めてもらおうとするジェレミィはよく似ているから。 「だから………俺はお前に約束してほしい。むやみに力を振るわないでくれ」 ジェレミィは、クレスが魔法を使う事に躊躇いがある理由を初めて知った。 だから頷き、返した。 「パパ……俺、約束する。でも、誰かがいじめられたりしていたら―――使っても良いよね」 「………優しいんだな、お前は」 ジェレミィの黒髪をくしゃくしゃと撫でるクレスの表情は穏やかだった。 憑き物が落ちた様な、そんな顔だ。 「パパ、クセになるぅ………」 「あぁ、済まない………そろそろ寝るか。明日もまた学校だろう?」 「………パパも一緒だけどね。どうせパパの学校通うんだったら、パパが先生だったら良かったのに」 「そう言うな。クロスだって満更じゃない」 「………だってクロスせんせぇ怖いんだもん」 ジェレミィがそう言った途端、クレスは腹を抱えて笑った。 ジェレミィは一瞬、クレスがおかしくなったのかと思った。 「あのさ………何でそんな笑うの?」 「顔も性格も名前も似ているのに、何で俺は怖くなくてクロスは怖いんだ?」 「だってパパ優しいんだもん」 真顔に戻ったクレスに、ジェレミィは言った。 その変わり身の速さにジェレミィは唖然とした。 ゼフィには甘やかし過ぎだと言われたのだが。 それを思い出してクレスは喉の奥で笑った。
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