第2章  栞(しおり)の場合

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あたしは、いつの間にか、自然に自分のことを、お兄ちゃんに話していたんです。 普段は、あんまり人には、こんなこと話さないんだけど……。 そのとき。 きっと、お兄ちゃんは、あたしにとって特別なのかも、って思ったんです。 すごく安心できて、すごく居心地がいい。 逢ったばかりなのに、不思議だな……。 「あのね、お兄ちゃん。相談に乗って欲しいことがあるの……」 あたしは、いま抱えてる大問題についても、お兄ちゃんに話していたんです。 先輩のことは、もうあきらめなきゃってことくらい、あたしにだって分かっていた。 でも……。 由加子と先輩が付き合い始めたって聞いたとき、あたしは、本当にショックだったんです。 でも……。 やっぱり、由加子とは友達でいたかった。 こんな話を聞いてもらっても、結局どうしようもないって、あたしにだって分かってる。 でも……。 お兄ちゃんは、ちゃんとあたしの話を聞いてくれた。 それだけで。 あたしは、救われた気がしたんです。 あたしは、お兄ちゃんと明け方までいろんな話をした。 「お兄ちゃん、電話番号教えてよ。栞のはね、えーと……」 あたし、またお兄ちゃんに逢いたいって思った。 だから、自分からお兄ちゃんの電話番号を聞いたんです。 そして、お兄ちゃんにお願いした。 「また、東京で。絶対に逢ってよね」って。 あたし、お兄ちゃんの手を握りながら、お願いしたんです。 「うん。じゃぁ、東京でね」って、お兄ちゃんは指きりしてくれた。 旅行から帰って、あたしはすぐお兄ちゃんに電話をした。 でも、いつも留守番電話だったんです。 やっぱり、忙しいのかな……。 あたし、留守電にメッセージ入れるのってキライ。 っていうか、苦手なんです。 でも……。 「…あっ。加藤栞です。昨日は、ありがとうございました。楽しかったです!」 うんっ。 すごく緊張するっ……。 「えーっと、来週あたりまた逢ってもらえないでしょうか?……また連絡します。バイバイ!」 あたしは、ドキドキしながら電話を切った。 また、今度電話してみよう。 だって。 あたしは、絶対に、またお兄ちゃんに逢いたいって思っていたから……。
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