27人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
その2
それから。
何回目かの電話で、やっとお兄ちゃんが出てくれたんです。
「あっ、お兄ちゃん!栞です。やっとつながった!」
「あぁ。ごめんね。どうした?」って、お兄ちゃんは言った。
「どうした、って。また逢ってくれるって言ったじゃん」
あたし、お兄ちゃんの声が聞けて、とてもうれしかったんです。
「まぁ、栞は妹みたいなもんだしな。じゃあ、いつ逢おうか?」って、お兄ちゃんは言った。
「じゃあ、今度の水曜日は?夜の8時にどこかで」って、あたしは答えた。
あたしとお兄ちゃんは、次の水曜日に新宿で逢うことを約束したんです。
やったーっ!
あたしは、とっても嬉しかったんです。
またお兄ちゃんと、お話できる!
水曜日が来るのが、とても待ち遠しかった。
その日。
夜8時に、マイシティー前のステージのところで、お兄ちゃんと待ち合わせしたんです。
8時10分、か。
お兄ちゃん、遅いな……。
「ごめんごめん!少し遅れちゃったね」と言いながら、お兄ちゃんはあたしのそばに走ってきたんです。
あたし、自然と笑顔になった。
「ううん。お仕事お疲れさまでした!」
お兄ちゃんの笑顔を見たら、あたしはまた楽しくなった。
お兄ちゃんとあたしは、新宿三丁目に向かって歩いたんです。
えいっ!
あたしは、お兄ちゃんのひじに手を絡ませた。
「おいおい!妹はそんなことしちゃダメなんじゃないの?」って、お兄ちゃんは言った。
あたし、勇気を出してこう言ったんです。
「妹だからいいんだも~ん」って。
それからお兄ちゃんとあたしは、チーズフォンデュを食べたんです。
写真の話や、最近起こった面白かったこと。
あたしは、またお兄ちゃんにいろいろな話をした。
お兄ちゃんは、ニコニコして話を聞いてくれたんです。
あたし、きっとそのときお兄ちゃんのことが好きになりかかっていた。
でも。
まだ、自分の気持ちが整理できていなかったんです。
だから……。
「そうそう!最近ね、友達の間で流行ってることがあるの。プロジェクトCっていうんだけど」と、あたしは言った。
勇気を出して、言った。
「へっ? なんだよそれって?」
お兄ちゃんは、不思議そうな顔をしてあたしの顔を見てる。
あたしは、平気な顔をしようとしたんです。
ニコニコ笑うように心がけて。
最初のコメントを投稿しよう!