第2章  栞(しおり)の場合

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「この後、お兄ちゃんに連れて行ってもらいたいところがあるんだ……」 「うん?何?どこ行きたいの?」 「ラブホテル……」 お兄ちゃんは、あっけに取られたような顔をして、あたしのことを見ていた。 あたしって、悪い子。 あたし、お兄ちゃんの反応を見たかったんです。 「……なんでプロジェクトCっていうの?」と、お兄ちゃんが聞いた。 「うーん……。よくわからないけど」ってあたしは答えた。 よしっ! あたしは真面目な顔をして、こう言ったんです。 「ねぇお兄ちゃん。なんかエッチなこと考えてない?」って。 「ううん。そんなことないよ」 お兄ちゃんは、いつものように落ち着いていた。 そのとき、あたし。 やっぱり、お兄ちゃんってステキだなって思ったんです。 「ホテルに行って何するの?」って、お兄ちゃんが聞いた。 「うん。えーと部屋を見て、お話するの。それだけ」って、あたしは答える。 「ふーん。変なの」って、お兄ちゃんは微笑んだ。 「今ね、学校で流行ってるの。社会見学ってところかな?」 そして、お兄ちゃんはこう言ったんです。 「で、栞はプロジェクトCやったことないの?」って。 「ないない!そんなとこ行ったこともないし。だからちょっと興味があるんだよね」 あたし、そんなことを言いながら、実はとてもドキドキだった。 「うん。でもだめだよ、栞。俺は連れて行かないよ……」 そう言って、お兄ちゃんは優しく笑っていた。 あたし、そんなお兄ちゃんを見て、安心したんです。 このひとは、あたしをきっと大切にしてくれる。 そんな気がしたんです。 お兄ちゃんとあたしは、新宿中央公園を散歩した。 プロジェクトBってことで。 カップルを見学しようって、あたしが言ったんです。 「ねぇ、お兄ちゃん見て!すごいよ!」 あたし、カップルがこんなにイチャイチャしてるの見るの、初めてだったんです。 あーっ、ドキドキする……。 「ねぇお兄ちゃん、やっぱりカップルらしく見せないとヤバくない?」 あたしは、そう言いながら、お兄ちゃんの手を握ったんです。 あっ。 お兄ちゃんの手、あったかい。 あたし、そのとき気づいたんです。 あたし、お兄ちゃんのことが、大好きだって。
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