第2章  栞(しおり)の場合

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そして。 それからは、なかなかお兄ちゃんに逢うことは出来なかった。 あたしは、お兄ちゃんに逢いたかった。 でも。 お兄ちゃんは、お仕事が忙しいみたいで、なかなか逢えなかったんです。 だから。 あたし、ホントはとっても苦手だけど。 お兄ちゃんの留守電に、メッセージを入れた。 「お兄ちゃん、元気?栞です。あのね、今日ね……」 そんな風に、毎日、その日の出来事を話したんです。 お兄ちゃんに逢えなくても。 きっと大丈夫。 だって。 あたし、お兄ちゃんのことが大好きだったから。 でも。 お兄ちゃんは、あたしに一度も電話をかけてきてくれなかったんです。 どうしてなの、お兄ちゃん……。 あたし、ずっと我慢したんだよ。 お兄ちゃんのことが、大好きだから。 ずっと。 先輩も、そうだった。 あたしのことを、ちゃんと見てはくれなかった。 お兄ちゃんもそうなの? そんなのイヤだよ。 お兄ちゃん……。 でも。 あたし、もうあきらめたほうがいいのかな? でも。 あたし、悲しいよ。 つらいよ、お兄ちゃん……。 気がつくと、あたし泣きながら眠っていたんです。 夢を見た。 お兄ちゃんが、遠くに行ってしまう夢。 行かないで、お兄ちゃん……。 目が覚めたあたしは、泣きながらお兄ちゃんに電話したんです。 「お兄ちゃん…どうして連絡くれないの?こんなの辛すぎるよ……最後に一度だけ…逢ってください。連絡待っています……」 そんなメッセージを留守電に吹き込んだあたしは、少し後悔していた。 最後に一度だけ、って……。 そんな悲しいことを、ホントは口にしたくなかった。 でも、もうダメかも……。 あたし、クッションを抱えて、ベッドでずっと泣いていたんです。 あたしは、お兄ちゃんからの電話を待っていた。 きっとくるんだ、って信じながら。
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