第2章  栞(しおり)の場合

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あたしは、お兄ちゃんに見て欲しかったんです。 あたし自身を。 妹として、なんかじゃなく。 「ごめん、栞……」 お兄ちゃんは、そう言いながらあたしを抱きしめてくれたんです。 「栞ね、お兄ちゃんのことが本当に好きだったの……。いつも優しくて、何でも楽しそうに話を聞いてくれて……」 でも。 お兄ちゃんは、何も言ってくれなかったんです。 やっぱり、そうなんだよね。 お兄ちゃん、良く分かったよ……。 お兄ちゃんとあたしは、ベッドに並んで寝転びながら、長い時間話をした。 そして。 いつの間にか、始発電車が動く時間になっていたんです。 ホテルを出たあと、あたしはもうお兄ちゃんと手をつなぐのをやめたんです。 もう、終わりなんだから。 もう、甘えちゃダメなんだから……。 そう自分に言い聞かせながら。 新宿駅に着いた。 マイシティの階段で、あたしは立ち止まる。 そして、こう言ったんです。 「さようなら、お兄ちゃん……」って。 お兄ちゃんが、あたしを抱きしめた。 あたしは、ゆっくりと顔を上げてお兄ちゃんの目をじっと見つめた。 あたしは、ゆっくりと目を閉じた……。 そして。 お兄ちゃんとあたしは、最初で最後のキスを交わしたんです。 ありがとう、お兄ちゃん……。 あたしは……。 お兄ちゃんの、目が好き。 くっきり二重に、フサフサまつげ。 あたしなんかより、全然長い。 まばたきすると、バサバサと音がしそうなくらい。 きっと、マッチ棒だって簡単に乗りそう。 そんな目で、見つめられたとき。 あたしの胸は、キュンってして、熱くなったんです。 あたしは……。 お兄ちゃんの、そんな目で。 あたしだけを、ずっと見つめていて欲しかった。 『恋愛小節1990~Girl's Side』 第2章 栞の場合 了
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