第3章 陽子の場合

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その2 あなたとあたしは、あなたのポルシェに乗り込んで、深夜の街を走った。 すごい車……。 かっこいい。 カーコンポからは、ヒップホップのダンスナンバーが、ノンストップで流れていた。 「ねぇ、これって、ひろさんがつないだの?」 あたしは、軽くリズムを取りながら、あなたに聞いた。 「あぁ……」 そう言って、微笑んだあなたの横顔が、とてもステキに見えた。 時計を見ると、もう午前3時を過ぎていた。 環七にあるロイヤルホストは、平日のこんな時間でも、けっこう込んでいた。 あたしは、サラダとオニオングラタンをオーダーした。 こんな時間に食べたら、太っちゃうな。 まぁ、今日はいいか。 うん。 オニグラ、最高! あたし、ハフハフしながらスープを食べる。 おいしい! あなたは、そんなあたしをやさしく見ていた。 そして。 あなたは、こう言った。 「ねぇ、陽子って血液型、何型?」って。 「内緒。うふふ。何型だと思う?」 あたしは、あなたにちょっと意地悪したくなっていた。 「でもさ。俺思うんだけど、たった4つのパターンに分類するのって無理あると思うんだよね」 あなたは、そう言ってあたしの目をじっと見つめた。 あたしは、あなたから目をそらして、あなたの指の動きを見ていた。 細くて、かわいい指。 まるで、アイツの指みたい……。 「O型だろ?陽子」 「残念でした!B型だよ~」と、あたしは笑った。 あなたは、がっかりしたような顔をしていた。 やっぱり。 分かりやすい。 「ひろさんA型でしょ?分かりやすいもん」 あたしは、あなたに本当のことを言う気になったの。 「ごめんなさい!ホントはあたし……O型だよ。今までA型の人と縁がなかったんだけど……」 あなたの表情が、パッと輝いたように見えた。 「やっと出逢えたかも……」 そう言ってあたしは、微笑む。
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