第3章 陽子の場合

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その4 あたしたちは、手をつないだまま、いつの間にか眠っていた。 目覚まし時計が、鳴る。 6時15分、か。 「おはよう!」 起きてきたあなたは、そう言ってあたしに優しくキスをした。 7時。 あなたは、仕事に出て行く。 「今日は何時に帰ってくる?」と、あたしはいたずらっぽく笑った。 あなたは、笑いしながら、こう言った。 「うん。連絡するね!」って。 その日の夜。 あなたから、電話がかかってきた。 「陽子?これから行ってもいいかな?食事どうする?」と、あなたは言った。 「えへへ。カレー作ったんだ。食べるでしょ?」 あたしは今日、午後からカレーを作ってた。 「うん。絶対に来てくれるって分かってたよ。信じてたもん♪」 そう言いながら、あたしはやっぱりカレーを作っててよかった!って思った。 あたしは、ドキドキしながらあなたを待つ。 あたしは今、あなただけを見ていたい。 あたしは、そんな風に考えることにした。 あなたとの日々は、穏やかに進んでいく。 あの日から、二週間が経った。 あなたは、いつもあたしの部屋に来てくれるようになっていた。 でも。 あなたはなぜか、あたしを抱いてくれなかった。 キスをしたり。 抱き合って、一緒に眠ったり。 でも。 あなたは、あたしを抱いてくれなかった。 どうしてだろう? 男の人って。 普通は、抱きたくなるんじゃないのかなぁ……。 あたしは、それが少し不安だった。 でも。 自分から、そんなことは恥ずかしくて言えなかった。 あたしは、ユカにあなたのことを相談した。 「うーん、たぶん大切にしたいんじゃないの?陽子のこと」って、ユカは言ってくれるけど……。 あたしは、幸せだった。 だけど。 あなたと、もっと深くつながりたかったの。 いつの間にか、池袋の街は、クリスマス一色。 クリスマスソングが、街に溢れていた。 あたしは、クリスマスをあなたと一緒に過ごしたかった。 でも。 あなたは、あたしと一緒にクリスマスを過ごしてくれるの? あたしは、不安だった。 あなたに電話したときに、勇気を出して、こう聞いた。 「ねぇ、クリスマスイブなんだけど……」 「クリスマスイブ?もちろん、お前と一緒にいるに決まってんじゃん」と、あなたは笑った。
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