第2章  栞(しおり)の場合

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第2章  栞(しおり)の場合

その1 あたしは……。 お兄ちゃんの、目が好き。 くっきり二重に、フサフサまつげ。 あたしなんかより、全然長い。 まばたきすると、バサバサと音がしそうなくらい。 きっと、マッチ棒だって簡単に乗りそう。 そんな目で、見つめられたとき。 あたしの胸は、キュンってして、熱くなったんです。 友達と一緒に、京都、神戸、大阪をまわる旅行に行ったとき、あたしはお兄ちゃんに出逢った。 食事をするために入ったファミリーレストランで、お兄ちゃんは撮影をしていたんです。 あっ。 カメラマンって、やっぱりかっこいい。 あたし、そんなお兄ちゃんに見とれていたんです。 なんだか、撮影が終わったみたい。 そのとき、お兄ちゃんがチラって、あたしの方を見た。 あたしは思わず、お兄ちゃんに手を振っていたんです。 そのとき、お兄ちゃんは、ニッコリと笑ってくれた。 あたし、その笑顔がとてもうれしかったんです。 あたしは、撮影機材を片付けているお兄ちゃんのそばに座って、お兄ちゃんのことをじっと見てた。 「こんばんは。ねぇ、テレビの撮影? カッコいいよね、カメラマンって」 あたし、お兄ちゃんに、そんな風に声をかけたんです。 照れたように笑うお兄ちゃんを見て、あたしは楽しくなった。 そのあと、あたしたちは、みんなで一緒にプールバーに行くことになったんです。 あたしは、お兄ちゃんのそばに付いて歩いた。 「名前なんていうの?」って、お兄ちゃんがあたしの名前を聞いてくれた。 あたしは、ちょっとドキドキしながら、答えたんです。 「栞……。加藤栞です」って。 あたしは、ちょっとだけビリヤードをして、あとは、ボーっとみんなの姿を見ていたんです。 あんまり得意じゃないし、つまんないな、ビリヤード……。 あっ。 お兄ちゃんが、ひとりでカウンターに座ってる。 あたし、勇気を出して、お兄ちゃんの隣に座ったんです。 そして。 お兄ちゃんの肩を、トントンって叩いた。 「ねぇねぇ、お兄ちゃん。写真のこと教えてよ。あたし、大好きなんだ!」 お兄ちゃんは、ちょっとびっくりしたような顔をしたけど、優しくいろいろなお話をしてくれたんです。 あたし。 そのとき、とても居心地が良かったんです。 お兄ちゃんと話してると、安心できるっていうか……。 この感じって、一体なんなんだろう?
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