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どれ位の時間がたったのだろうか、静かな部屋に携帯の音が鳴り響いた。手で携帯を探り出し、アラームを止める。
ゆっくりと体を起こすと、そのまま服を脱ぎ、バスルームへと入っていった。
バスルームからシャワーの音がする。バイトに行く時間だ。
シャワーを浴びた忍が、頭をタオルで拭きながらでてくると、そのまま洗面台に向かう。慣れた手付きで髪をセットしている。
いつもは下げている前髪を上げるとイメージが全く違った。
「行くか」
着替えを済ませた忍が、テーブルに置いてあったメガネをかけると、まるで別人のようだった。
部屋を出ると忍は鍵をかけてバイト先に向かう。アパートの階段を降りるとやはりカンカンと音がした。
15分ほど歩いただろうか、ある店に入っていく。ここがバイト先だ、そこはおしゃれな飲み屋だった。
更衣室で制服に着替える。店のオーナーの善意で、未成年だが無理に働かせて貰っているのだ。その為、彼は髪型を変え伊達メガネをかけて働いていた。少しでも迷惑がかからないようにと。
「おう、忍、いや、ここじゃぁレンだな。今日も頼むぜ」
オーナーが声をかける。レンというのは偽名だ。
「お前さんが働き初めてから、お前目当ての客が増えたからな」
オーナーが嬉しそうににっこり笑った。
もともと暇な訳ではない、それでも忍が入ってから、女性客が増えていた。それに伴い、忍に飲ましてくれる女性客も増えていたのだ。確かに忍は整った顔立ちをしていた。
さらに忍は滅法酒に強かった。どんなに飲んでもケロッとしているし、二日酔いになったこともなかい。
着替え終わった忍は店にでた。まだ開店前の店は静かだ。
「仕込みはいりまーす」
後1時間もすれば開店だ。忍は仕事を始めた。
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