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忍が教室が着いた時には、すでに朝のホームルームは終わっていた。しかし、前の席に秋子は座っていない。
やはり風邪か?忍はまだ秋子が拉致されたことを知る由もなかった。
キーンコーンカーンコーン
授業の開始を告げるチャイムが響いた。生徒達は慌ただしく席につく。
教師が室内に入ってくる、教壇につくと、日直が号令をかけた。みんなが日直の声に合わせて頭をさげる。しかし、忍の意識はここで遠ざかり、ウトウトと眠りの世界へと旅立っていった。
忍は体育以外の授業は、半分以上寝て過ごしていた。原因はバイトが半分、やる気のなさが半分だ。
「おーい、体育だぜー、起きろー」
クラスメイトの声で目覚めた忍は辺りを見回した。ほとんどの生徒はすでにグランドに出ていた。時計をみると11時45分を指している。次は4時間目だ。
「よく寝てたな」
ああ、と答えると忍は着替えをはじめた。彼が休み時間も寝続けることは、決して珍しいことではない。ただ、忍が寝てるとき、起こしてくれるのは、いつもは秋子だった。今日はその秋子はいない。
「いつもは葛城が起こしてくれてたもんな。お前ら仲良いからなぁ…なあ、早く見つかるといいな」
「はあ?どういうことだ?」
「仲良いだろ、よく二人でいるし…も、もしかして、知らなかったのか?葛城が昨日から行方不明なんだ。自転車は見付かったから、なんか事件に巻き込まれたんじゃないかって話だ。おっと、遅れちまう。先いくぜ」
そう言うと、彼はグランドへと歩き出した。
「行方不明、だと?」
ふと朝の二人組が頭をよぎる。だが、どうしても接点が見付からない。
自分と彼女を同時に拉致する理由がみつからないし、自分に対する喧嘩に彼女を利用するつもりなら、今日の朝何かしらの行動を取っているはずだ。
「まさか、な」
忍は考えるのを止め、着替えを済ませた。体育用のジャージに着替えると、グランドへと向かって行った。
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