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その公園の横を女子高生が自転車で通り過ぎようとしていた。
「あ、神夜君だ」
少年に気付くと自転車を降りて公園に入っていく。
「神夜君、おはよー。あ、またタバコ吸ってる、駄目だよタバコなんか吸っちゃ」
そういうと少女はちょこんと横に座る。
「おう、秋子」
神夜と呼ばれた少年は、秋子に挨拶を返すとタバコを携帯灰皿に捨てる。そして、飲みかけのコーヒーを一気に飲み干すと、空き缶をくずかごに投げた。缶は放物線を描き、まるで風に乗っているかのようにかごに吸い込まれていった。
「早く行かないと遅刻するぜ?」
まるで他人事のようにそういうと、彼はポケットに携帯灰皿をしまう。
「え、あ、うん。一緒に行こう?」
秋子は立ち上がり、くるっと振り返ると、微笑みながらそう言った。
少年ははいはいと呟き、やおら立ち上がると秋子の後に続いた。
彼の名は神夜 忍。この物語の主人公である。そして、この少女は葛城 秋子。
これから、大きな使命を負うことになることを、二人はまだ知らなかった。
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