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神夜 忍と葛城 秋子は1年2年と同級生だった。
運動神経は抜群だが、勉強はあまり得意でない、不良のレッテルを貼られた神夜 忍は、勉強は得意だが、運動音痴な、クラス委員長を務める優等生な葛城 秋子にとって、とても対象的な存在であった。
自分に自信の持てない秋子にとって、忍はまるで太陽であり、そして自分は月であった。
自分に無いものをすべて持つ忍に恋心を抱くまで、そうは時間はかからなかった。しかし、今に至るまで、その気持ちを伝えることもなかった。いや、伝えられなかったのだ。
「くそー、校長めー、バカみたいに長々と話しやがって」
始業式が終わり、体育館から生徒が出て来る。
よほど校長の話が長かったのだろう、文句をいいながら教室に戻る生徒が多い。
3年5組の教室──
生徒があちこちで談話している。
その中で忍はどこから取り出したのかマンガを読んでいる。
その前の席に秋子が座る。体ごと振り返ると、満面の笑みをこぼした。
「また、同じクラスになれたね」
うれしいな、と続けて呟くが、それは忍の耳には入らなかった。
「ん、ああ、またよろしくな」
笑顔で返事をした忍は再びマンガに目を落とす。
うん、と秋子が返事をすると、皆が慌ただしく席に戻る。どうやら担任の先生がきたようだ。
「席につけー、ホームルーム始めるぞー」
今日は始業式だけで終わり、午後からは入学式がある。連絡事項を伝えると、そうそうにホームルームは終了となった。
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