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忍と別れた秋子は自転車をこいでいた。足が軽い。黒く長い髪が風になびいている。
また同じクラスになれた。顔が知らないうちに綻んでいた。
今年こそ絶対気持ちを伝えたい、決意すると同時に不安が湧き上がってきた。
でも、嫌われたくない、断られたらどうしよう、という思いだった。
優しい性格の秋子は、それと同時に臆病でもあった。
人に嫌われたくない、と自分の気持ちを押し殺してしまう癖があるのだ。
「どうしよう、嫌われたくないよ。でも、卒業したら会えなくなっちゃうかもしれない…そんなの嫌だよ」
気持ちが口から自然とでていた。目頭が熱くなる。今にも涙がこぼれてきそうだった。
自転車を降り、トボトボと押して歩く。さっきまでの足の軽さはどこにいったのだろう、今は鉛のように重い。
嫌な気持ちを振り切ろうとすればするほど、次から次へと不安がわいてくる。これが今まで一度も気持ちを伝えることができない原因だった。
「はぁ」
赤信号に立ち止まり、ため息をついた時だった。
「葛城 秋子さんだね?」
「は、はい」
ふいに声をかけられ、びっくりして振り返る。
そこには見るからに怪しい二人組の男が立っていた。
「すまないが、我々についてきてもらう。君に拒否権はない。」
そういうとナイフを突きつける。
神夜君、助けて!恐怖で口も動かない。彼女は為すすべもなく、言われたままに車に乗るしかなかった。
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