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「安元さんのはまた手が込んでますね」
「そうか?そんなでもないぞ?」
安元さんの弁当にはアスパラの肉巻きやら、だし巻き卵やら、ほうれん草のソテーやら、色々なおかずが所狭しと並んでいた。
「いやいや、これはどう見たって手が込んでるでしょ…」
「いや、でもほうれん草は冷凍のだし、肉巻きだって作り置きですよ?」
「一個もらいっ!」
「あ!中村!お前太るから食べすぎるなって言ってるだろ!何度言ったら分かるんだ!」
安元さんの制止する声も聞かずに俺は安元さん作アスパラの肉巻きを口へほうり込んだ。
アスパラのしゃきしゃき感とベーコンから出る甘い脂が見事に合っていて、何だかさっきまで痛かった腰の痛みまで忘れてるくらい優しい味が口いっぱいに広がる。
「おいしい~」
思わず顔にも自然に笑みが零れる。
「おっ中村くんの顔に笑みが!」
「珍しー」
「いや、これ食えば誰でも笑み零れますって」
「どれどれ」
神谷さんもつまむ。
「あ!俺の肉巻き!」
「ホントだぁ懐かしい味がする~」
神谷さんの顔もほわわ~んとした笑顔になる。
何とも女王様とは思えないほどの、和やかな笑顔。
その時、神谷さんの顔を見た生徒たちが、たちまち顔を赤く染めていたのを俺は見てしまった。
しかも女子だけならまだいい。
男子までもが頬を赤く染めていたのだからせっかくの笑顔も若干引きつってしまう。
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