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あっ、このスーパー潰れるんだ。
カーテンを開けたらスーパーが取り壊されていた。
変わるんだな、この街も。
ぐるぐると変わっていく。
それに馴染むように人も変わっていく。
俺も変わるのかな。
怖い。
変わるのが、怖い。
どうしようもなく、怖い。
変わるために、俺はなにを犠牲にするんだろう。
思い出、友達、家族、それとも大切な君?
嫌だ、犠牲にしたくない。怖い怖い。
「どうしたの、そんなとこでうずくまって」
君の声がして顔をあげたら君がいた。
「お前こそ、なんで」
「メール。すぐ来てって、送ってきたのあんたじゃん」
そうなんだ。
無意識に送ってた。
「んで、本当にどうしたの。泣きそうじゃない」
ああ、情けない。
スーパーごときになに弱気になっているんだ。
なんで君の姿を見たら安心したのにもっと悲しくなっているんだ。
「うわっ、急に抱きつかないでよ。びっくりするじゃない。本当、どうしたの」
「変わらないで」
「えっ」
君は変わらないで。
街みたいに俺をおいて変わらないで。
いつまでも、君は君のままでいて。
ため息をついて俺の頭を撫でる君の手は優しくて温かかった。
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