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僕は歩いた。
ただひたすら歩いた。
『いま、地球の裏側はどうなっているのか。
無事な地域や海外からの援助はないのだろうか。
どうであれ、日本がこんな状態なら、世界中、混乱に陥っているだろうな。』
などと考えながら、足取りは変わらずゆっくりとひたすらに、僕の足音だけが響くこの虚しい世界を歩いた。
飢えに耐えながら。
どれくらいの時が過ぎたのだろうか。
僕はいつの間にか太陽に追い抜かれていた。
灰色の世界が仄かに赤黄色く染まった。
あぁ、疲れた。
『もう夕方…か...。』
視界が霞む…。
僕は少しだけ腰を落とした。
何もない。
本当に何もない。
瓦礫と死体で溢れた世界。
僕は死体を見ることに少しばかり慣れたのかも知れない。
『疲れたな…。』
僕は少しだけ目を瞑った。
無音の世界が辺りに広がる。
《ちりん…》
《ちりん…》
どこからか、無音の世界を切り裂くような微かな鈴の音が鳴っていることに気付いた。
微かなのは、遠いからか?
もしくは微弱な力から振り絞られた微かなサイン?
心霊現象であれなんであれ、この何もない世界が僕の中で劇的に変化したのは言うまでもない。
大きな希望を胸に、僕はよく耳を澄まし、音のある方向を探した。
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