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《ちりん…》
《ちりん…》
『このままじゃ終われない。』
頭の中で何度も唱え、痛みを堪え、僕は音のする方に向かって歩き出した。
この無音の世界で、音がどこから聞こえてくるのか、理解するのは容易いことだった。
僕は重い足を引き摺り、ひたすらに音の方向に向かった。
《ちりん…》
《ちりん…》
音が近くなる。
『あぁ、これで変わる。
きっと何かが変わるんだ。』
“うぅ…
ひっく…
ひっく…”
《ちりん…》
何処からか…
きっと、瓦礫の下から…
啜り泣く呻き声、
そして鈴の音が聞こえた。
あぁ、やっと生き残りを見つけたんだ。
僕だけじゃなかったんだ。
『あぁ、良かった。』
僕はつくづくそう実感した。
「おぉい!誰かいるの!?」
僕は目一杯の力で叫んだ。
「こっち…。ここにいるよ!」
瓦礫の下から声が聞こえた。
幼く、か細い幽かな声で。
「待ってろよ、今助けるから!
だから、頑張るんだぞ!」
僕は必死に瓦礫を退けていった。
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