夢想曲~fragile~

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僕は無我夢中で瓦礫をどけていった。 積み上げられた瓦礫がなくなっていくにつれ、僕の中で期待が大きくなった。 でも、それと同じように不安も大きくなった。 『もう何も失いたくない。』 僕は必死になって作業を進めた。 暫くすると、微かな明かりの中に、小さく幼い手を見付けた。 それは、間違いなく血が通っているであろう、初めての手だった。 「がんばるんだぞ!もうちょっとだからな!」 自分の性格なんて忘れてしまっていた。 自分がどのような人間だった、なんてまったく記憶にはなかった。 でも、少し違和感を覚えた。 きっとこれが本当の僕で、忘れた僕はオブラートに包まれた僕、あるいはコーティングされた僕だったのだろう。 見え始めた確かな希望に、僕はそれ以外の思考を奪われていた。 僕にはもう体力など残っていなかった。 それでも必死になった。 『助けたい。』 『もう独りは嫌だ。』 複雑、しかしながら純粋でゆるぎない思いだけが僕を動かしていた。 ひたすらに作業を進める内に、時間は過ぎて、周囲は真っ暗になり、いや、もううっすらと明るくなっていた。 やがて、薄明かりに少女の身体が姿を現した。 「よくがんばったな。」 意識が朦朧とした中、僕は少女の小さな体を抱き上げ、ぎゅっと抱き締めた。 「ん…ちょっと…疲れた…。」 真夏の日差しが照りつける中アイスクリームが溶けるように、僕の全身の力が抜けていった。 僕はそのまま後ろに倒れ込んだ。 瞼が重力に負けそうになる中、僕はその時少女の顔を初めてみた。 一瞬だった。 少女は両眼から何かの液体を流していた。 少女はそっと微笑むと僕の意識は遥か彼方へと向かった。  
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