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眠りに就いてから数時間。
微かな光に僕は目を覚ました。
舞い上がる粉塵。
粉塵が光を遮っている。
世界は灰のままだ。
夢なんかじゃなかった。
僕はぼーっとしながら少し寝返りを打った。
カサカサ…
寝そべっていた僕の耳元で何か嫌な音がした。
瓦礫の隙間からゴキブリが顔を出していた。
『凄い生命力だな…。』
ぐちゅ
そう呟いて僕はおもむろに立ち上がり、そしてゴキブリを踏み潰した。
もしかしたらこの世界は僕とこのゴキブリだけの世界だったのかもしれない。
そう考えると踏み潰したそれも貴重に思えた。
ぐぅ~
『あぁ、お腹空いたなぁ。』
こんな世界に食べる物などあるはずがない。
恐らく、殆どが灰になったのだろう。
僕は少しでも長くこの絶望を生き延びるために、生きる術を探さなければならない。
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