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やんわりと、訂正した声が聞こえて来る。
女性?
通路を覆う火の海を裂きながら進む人影が、近づいて来る。
―その光景はさながら樹海もとい、十戒。
長いプラチナブロンドの髪が彼女を動きに合わせて動く。ドレスのような純白な服を着て、肌は決め細かく、腕は細い。
顔を確認しようと頭を上げる。
思考回路停止―――起動。
―何と言う美しさだ。
顔立ちは、記憶メモリーの中に在る女性より、綺麗で優しさを含んだ柔和な微笑みを浮かべている。
―マリア《聖母》そんな単語が思考回路を埋め尽くした。
「おや?カミサマと言う人物はなんたらかんたらって言ってませんでした?」
「いや。存在否定はもうしません。ちなみに宗教上の神仏を信用したのは二度目ですから」
「失礼ながら、一度目は何ですか?」
「仏様」
「機械人間の癖に仏教徒とは、生意気な。」
「日本の坊さんを全てを敵に廻す気か。罰当たりな。
ちなみに自分はこう見えても、日本製なんです。自分の産まれ故郷の宗教を信仰して何が悪いんです?」
「正論で返されるとは…ていうか、先ほど仏教徒の癖に主に捧げる祈りをしてましたけど?」
「いえ。何も起こらなかったら仏様に鞍替えしようかと思いまして…何か起こったらラッキーぐらいの思考で祈りました。
そんな祈りでカミサマが現れるとは…カミサマは律儀ですね。」
「罰当たりはどっちですか…神仏をなんだと思っているんですか?貴方は……まあいいでしょう。あなたの仏教徒だろうが主に殉じる信仰者だろうがこの際関係ありません。」
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