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僕は必死になって叫んでみた。
だが自分の声が聞こえない。
声を出しているはずなのに、暗闇の中で僕の声は響かない。
いくら叫んでも届かない僕の声。
微かに聞こえるのは、遠くで誰かが呼んでいる声。
誰かが呼んでいる?
その声は、だんだん近付いてくる。
そしてトーンは大きくなり、僕の名前を呼んでいる。
「 」
「 」
その声に導かれるように、僕は足を踏み出した。
瞬間、僕の身体は闇へと落ちていく。
奈落の果てへと――
一体、僕をあそこに連れて行ったのは誰なんだろう?
一体、僕はあそこで何をしていたんだろう?
一体、僕は誰なんだろう――?
闇の最果てまで辿り着いた僕は、何もする事なくただ呼吸だけを繰り返した。
闇の最果ては、どんな黒よりも濃かった。
end
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