十話 天の邪鬼

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 コンコンッ。 「失礼します」 部屋に入ると、医師が深刻な面持ちで待っていた。 「お座り下さい」 「はい」 間があってから、医師が重い口を開いた。  「率直に申し上げます。 今日、念の為もう一度検査したところ、昨日に比べて急激に患部が膨らんでいます。 これまで以上に、病気の症状が出るかもしれません。 それに、脳が圧迫されて危険な状態だと思われます」 「耕太は、どうなるんですか?」 「手術で、その部分を切除しても、助かるかどうか・・・。 今は、安静にしてるしかないと思います」 母は、涙目になった。  「朝は、何であんな事に?」 父は、毅然とした態度で話を続ける。 「それが、よく分からないんです。 何の前触れもなく、突然あのような行動をとったようですし」 「そうですか」 「今は、誰とも会わない方がいいかもしれません」  「耕太は、ずっとあのままの状態で、過ごさないといけないんですか?」 母は、涙ながらに言った。 「今朝の行動の原因が分からない以上、また同じような事があるかもしれません。 しばらくは、あの状態で我慢してもらった方が、耕太くんの為かと」 母と父は、医師の言葉に従うしかなかった。
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