十話 天の邪鬼

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 その頃、僕は夢の中にいた。 「今、お前は幸せだと言ったな」 また、顔の見えない相手が、僕に話し掛けてきた。 「言いました」 「だが、その幸せが続くとは限らない」 「でも、彼女が言ってくれたんです。 「好き」って、言ってもらうのが夢だって」 「口では、いくらでも言える」 「・・・」 なおも、その人物(?)が続ける。  「今の幸せを永遠のものにしたくないか?」 「出来るなら・・・」 「なら、俺がお前を殺してやろう」 「え!?」 顔の見えない相手は、どんどん近付いてくる。 怖い。 でも、体が動かない。  「死にたくない」 「死ねば、幸せを失う事に怯える必要もなくなる。 死ぬのは一瞬だ。 怖がる事はない」 「助けて! 母さん! 父さん! まだ、死にたくないよ!」 夢の中の声は外に漏れていた。
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