パターン1

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 「耕太さんて・・・」 「え?」 香菜恵さんの言葉に母が振り返る。 「幸せに敏感だったんじゃないかなって」 「何で、そう思うの?」 「最初は、照れ屋なだけだと思ったんですけど」 「照れ屋ねぇ」 母は思わず笑ってしまう。 「でも、よく考えてみると、幸せに臆病で・・・それでいて誰よりも幸せを求めてた。 そんな気がするんです」  天の邪鬼の声 (お礼を言おうとした時。 なんか、改まってお礼を言うのが恥ずかしくて。 自殺しようとした時。 まだ、この先良い事があるんじゃないかって。 だから躊躇した。 伊藤さんの家に泊まった時。 自分に好意を持ってくれてるか、分からなかった香菜恵さん。 今、確実に好きでいてくれてる伊藤さん。 どっちが、傷つかずに幸せになれるかを天秤にかけたんだ。 死のうとした時。 今の幸せを失う事が不安で仕方なかったんだ)  「幸せになりたい天の邪鬼が、耕太の体に入ってたのかしらね」 もう、彼女と母は打ち解けていた。 「耕太は幸せね。 こんなに想ってくれてる人がいて」 母は微笑んだ。 「なんか、まだその辺から見てるような気がするんですよね」 雲一つない空を見上げ、彼女は大きく息を吸い込んだ。 「幸せになれよぉ~!! 天の邪鬼~!」
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