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「ちょっとアンナ。時間ないんだから、冗談はよして」
「んぅ~、冗談なんかじゃぁないしぃ~」
間延び口調ではあるが、アンナはいたって大真面目のようだ。なおさら質が悪い。
その眼差しを、ナオミはまっすぐ見つめ返す。
「……理由は?」
ひとまず、アンナの言い分を聞く事にする。
半年前からの約束を反故にするほどの、その理由を。まぁ、聞かなくてもだいたい予想はできているのだが。
「あのねぇ………………すっごく、眠いのぉ~」
思わずため息が漏れる。
予想的中。寸分違わず。
ここまで見事だと怒りや呆れなど通り越し、いっそ爽快ですらある。付き合いが長すぎるのも、時には考えものだ。と、ナオミは心中で思った。
「というワケでぇ、『あの子たち』には~、ナオミから謝っておいてぇ~」
アンナは「じゃあ、おやすみぃ~」。と踵を返し、ドアを閉める。
旧友の寝癖頭が、ドアの向こうに消えた。
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